「人間とは何か」という問いに対する、うんと古い回答にオイディプスがいる。古代ギリシア神話の登場人物だ。
オイディプスは跛行者である。
そもそもオイディプスという名前自体が “腫(は)れた足” を意味している。だから、足を引きずったり、左右に揺られたりしながら歩いている。
ここから、
「人間とは、まっすぐに歩けない動物である」というイメージが現れた.これは、C.レヴィ・ストロースによれば、人間の定義として、最古の部類に入るとされる。
まっすぐに歩けない人間が、先々の方向感覚を得るために、時代時代で物語(神話)を形成していく。この中に、民族や部族の知恵、経験、思想が保存され、それが座標軸となり、代々継承され、ときに革新されていったのである。