革命は夜明けを意味しない——
革命のパラドクスを一言で要約すればこうなる。
人間社会の観察者A. トクヴィル(A. Tocqueville, 1805 – 1859)は、かつてこう見抜いた。「革命は旧体制を撤廃しない。むしろ拡充する」と。
彼が指摘したように、フランス革命後に残ったのは、あいかわらずの官僚制支配だった。政治、経済、学術、芸術の中心地は、パリに残ったままであった。
ロシア革命がもたらしたものも農奴制であり、秘密警察であり、融通の利かない官僚制度だった。
つまり、ロシア革命を推進した自由主義者たちがもっとも嫌悪したもの、すなわちツァー体制の中核は、したたかに温存されたままであった。
そしてこのことは、毛沢東の文化大革命についても該当する、ということができる。
これこそがまさに、革命という神話であり、「革命は夜明けを意味しない」というパラドクスである。
ここでトクヴィルによって指摘されたのは、革命という言葉のもつ甘美なイメージに反して、急進的な社会変革の限界であった。
ホメロス(前750年頃)やヘシオドス(前700年頃)の作品は創作というよりも、その前から伝承されたギリシア神話に基づくものだと柄谷は述べている(p.75)。といってもただ引き写したのではなく、オリンポスの神々は彼らによって創られ、ギリシア人たちは、ホメロスやヘシオドスを通して神話を学んでいったらしい。彼らの詩作はイオニアで発達した文字で記されることで、やがてギリシア全土に広がり、多くの人びとに共有される教養的基盤となったそうだ。
「人間とは何か」という問いに対する、うんと古い回答にオイディプスがいます。古代ギリシア神話の登場人物です。オイディプスは跛行者です。そもそもオイディプスという名前自体が “腫(は)れた足” を意味しています。だから、足を引きずったり、左右に揺られたりしながら歩いています。
ここから、人間とはまっすぐに歩けない動物である、というイメージが現れることになります。まっすぐに歩けない人間が先々の方向感覚を得るために、時代時代で民族や部族の知恵、経験、思想、物語といった座標軸が形成され、継承され、革新されていきました。
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