ここではエマニュエル・トッドの「言葉に対する警戒心」が明かされる。理系中心のクラスに属して育ち、みずからの家族構造からフランスとドイツの哲学に敵愾心を持ち、言葉そのものを警戒する人物。
「もともと私は、哲学的思考、人間一般についての思考にあまり興味がありませんでした。これは、フランス人としてはあまりノーマルなことではありません。
私は物理や数学が好きで、理系中心のクラスに属していました。それにくわえ、家族から引き継いだものがあります。フランスとドイツの哲学に対する敵愾心です笑。
そういったわけで、そもそも哲学に詳しくないのですが、かなり若いころから、言葉そのものに対する警戒心がありました。言葉の羅列は、しばしば何の意味ももっていない、ということを意識していました。
フランス人の多くは、このようには育てられていないと思います」
大陸のidealismを嫌う家風で、言論の基盤を統計データに依り、すでに起こったことと、その意味を説くスタイルができあがった。『パンデミック以降』では、①国家の衝突、②社会格差、③教育階層の分断、④宗教対立、⑤グローバルな地殻変動を説くばかりでつまらない。