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「市場が縮小している」ということだが、「市場」というと、現代人のほとんどは、「経済的な取引の場」を連想すると思う。それはほとんど“思考の自動化”といっていいかもしれない。だが、「市場」は、もうひとつ大事な意味をもっている。「ひとが集まり、交流する場」、「ひととひととが関わり合う場」という意味だ。商業的・経済的な場という以上に、社会的・公共的な場としての「市場」である。いまでは前者の意味(「商取引の場」)が表に出すぎていて、この後者の意味のほうは背後におしやられてきたので、現代の人々は、なかなか連想しにくくなっている。

なにも「市場」という概念に限ったことではないが、このように、ひとつのことばに対する偏見や思いこみがあって、それが人びとの思考を、あらぬ方向に形づくってしまうことがある。これを「市場のイドラ」という( Idols of the Market )。16〜17世紀の哲学者フランシス・ベーコンが指摘したことだった。

冒頭の「市場が縮小している」とは、取引量や需要が縮小しているという意味合いだろうが、視点を変え、ひとが集まり、関わり合うなかから新たな需要が発生することを知れば、自ずと打開策の方向が見えてくるのではないだろうか。