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ひとは、ことばによって世界をつくっていきます。これはなかなか凄いことですが、ビジネスにおいても、この原則はあてはまります。たとえば、創業時には無縁でも、やがて「社外取締役」という概念を知るなかで、実際に社外取締役をそろえていくことになるでしょう。「コーポレート・ガバナンス」ということばを初めは知らなくても、一度ガバナンスという概念を知ると、ガバナンス・コードを意識しながらビジネスを組み立てていくことになります。ほかにも、「キャッシュレス」といった、おカネに関することばは普及がはやいですね。これによって集客のあり方も、精算の形も変わります。

このように、ひとはことばを使って、だんだんと世界をつくりあげていきます。いいかえるなら、新しいことばには、既存の世界を変形する力があります。ノミを使って彫刻を造形するように、ことばを使って世界を造形していくことができるわけです。端的にいえば、ことばは「形」に関与する。これが、ことばの創造的機能です。

「形」ということで言えば、イノベーション(革新)とは、「ものごとの形が大きく変わる」ことを言います。社会的イノベーションと言えば、社会の形が大きく変わることを指します。思考のイノベーションと言えば、認識のパターンが大きく変わることを指します。ここまでの話から判るように、革新的な現象を生みだす以上は、新しいことばを手にすることが必要不可欠です。

しかも、その新しいことばは、単なる流行語のことではなく、明日の社会と文化にフィットし、そこに働く人たちの価値観と期待にフィットし、経済的な機会と課題にフィットしなければなりません。現役の経営者(マネジメント)なら、新しいことばを知るための回路を、二、三持っておくのが賢明ではありませんか。変革期の知恵として。