インド・ヨーロッパ語族の原郷について。
「北欧」というと、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、そしてデンマーク、アイスランドの5カ国を指すことが多い。だが、言語的に見ると、フィンランドだけ、別語族になる。残り4カ国は、英語と同じ、インド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派なのに対して、フィンランド語は、ウラル語族になる。
このように、北欧5カ国といいながら、言語的に見ると、フィンランドだけ別語族なように、「バルト3国」といいながら、言語的に見ると、エストニアだけ、別語族になる。残り2カ国(リトアニア、ラトビア)は、インド・ヨーロッパ語族なのに対して、エストニアは、ウラル語族となる。
こうしてフィンランド語とエストニア語が、ともにウラル語族に分類されることを確認した後、あらためて残りの言語について目を通す。
・ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドは、ゲルマン語派—北ゲルマン語となる。東ゲルマン語にはゴート語が、西ゲルマン語には、オランダ語、ドイツ語、英語が含まれる。
・リトアニア、ラトビアは、バルト・スラブ語派—バルト語派だ。以上はすべてインド・ヨーロッパ語族 Indo-European languages に含まれる。
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右側に目を移せば、インド・イラン語派のなかにサンスクリットがみえる。だが、それについて見ていくのは、また別の機会にしなければならない。
インド・ヨーロッパ語族の起源に追った、デイヴィッド・W・アンソニー『馬・車輪・言語』(上下巻、東郷えりか訳、2018年5月)を書棚から取りだす。
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ここでは、インド・ヨーロッパ語族のはじまり(祖語)はアーリア人ではなく、ポントス・カスピ海草原 Pontic–Caspian steppe あたり(map, 赤い囲み)に、BC3500年頃に存在した、古代ステップの民が使っていた言語だとするナラティブが披露されている。