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先日ポストした、「人を助けるテクノロジー」(2月11日)で、なぜかリハビリについて書いた。その後、「人間と機械の関係:その2側面」(2月15日)を書いたとき、なぜかヘンリー氏という人物を登場させた。今日、ランダムに選んだ映画が『心の旅』だった。リハビリテーションの映画だった。しかも、ハリソン・フォード演じる主人公の名前が「ヘンリー」であり、原題は、“Regarding Henry”だった。主人公の自宅のメイドが、実際に“Mr. Henry(ヘンリー氏)”と呼んでいた。

さて、ヘンリーは、ニューヨークの冷酷な成功した弁護士だった。ところがある日、たばこを買いに入った近所の小さなストアで強盗に遭遇。銃弾を受け、いままでの記憶を全喪失する。本作は、そこから回復していく物語である。次の場面を紹介しよう。

古巣の弁護士事務所のパーティー会場に、リハビリの末に復帰したヘンリー氏と、妻のサラがいる。「ようこそ」「おかえりなさい」皆ねぎらってくれるが、表層的だ。べつの離れた場所で、古くからの同僚たち4人が、ヘンリー氏について会話をしている。

「かつてあんなに頭の切れた男が…」と同僚のひとりがいった。
「彼以上の弁護士はいなかったわ。彼と闘う相手は震え上がってたわ」
「復帰したとか」と別の女
「かたちだけさ」と男
「給料ドロボーとはうらやましい」
「私は、サラに同情するわ」
「彼は大きな子ども。一生大きなお荷物よ」
「敏腕弁護士が、一夜にして子ども同然」
「お互い ご用心を」
一同、卑しい笑い。
その背後にヘンリー氏と妻のサラ。一連の会話を聞いてしまう。

後日、ふさいでいるヘンリー氏を気遣った妻のサラが、病院でヘンリー氏のリハビリを支えてくれたトレーナーを自宅に招く。

「ひざが悪いんだ」とリハビリ・トレーナーはいった。
「……」
「なあ、なぜって聞けよ」
「なぜ?」とヘンリー氏。
「フットボールだよ。大学時代に痛めた。フットボールが人生だった。ほかにはなにもなかった。母校での試合。高くキックされたボールを受け止めた。目の覚めるようなナイス・キャッチ! そのとき聞こえたんだ。ひざの骨の折れる音が……。その瞬間、自分ではっきりわかった。“これでオレの人生は終わりだ(Game over, I was dead. My life was over.)” と。では、いまのオレが、そう思っているか……」
「きみは……」とヘンリー氏が言いかけるのを遮って、彼がいう。
「そう思ってはいない。あれは試練 test だったのさ。別の人生を見つけた。リハビリの いいトレーナーに巡り会った。クールでね、太ってたけどさ 笑。で、“オレもトレーナーに”と。昔の友達は腹を抱えて笑った。“おまえが看護師になるのかい?” だがどうだ。オレは、あんたを歩かせた。あんたは口をきき、いま、こうして高級ビールを飲んでる。オレが力を貸した。ひざのケガのおかげだ。それで あんたと出会えた……。これだけは忘れるな。人の言うことなど気にするな。いまにきっと自分が見えてくる」
「…………ありがとう」

監督は、Mike Nichols。脚本は、映画脚本2本目のJ.J. Abrams。

さらにいえば、本作の監督Mike Nicholsは、「人を助けるテクノロジー」(2月11日)の次にポストした文章「理性を授けられた動物」(2月12日)で紹介した小説『イルカの日』の映画監督でもあった。

監督のMike Nicholsは、アカデミー賞、エミー賞、トニー賞、グラミー賞を受賞した。4受賞したのは歴代12名ほどしかいないという。

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