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「適度な競争意識は刺戟を生むと思っているけど」と〈彼〉はいった。「だけど、trans-competitionという言葉が出てきて、その帰結なんだけど、さらにcut-throat competitionという言葉が出てくると、いくらなんでも異常・異様だよ。みんなレッド・オーシャンとか気軽にいうけど、なんで海が赤いかというと、大量のcut-throatの結果だからね」
「なるほど……。そういえば、このあいだ、マレーシアで未知の言語がみつかたって」
「ああ、記事で見たよ」
「その民族には、所有とか競争にあたる言葉がなかったそうなんですよ」
「そういう言葉やコンセプトがないんだから、そうした行為がエスカレートすることもない。こういう話は、人類学や霊長類学に詳しいね。なのに霊長類学とビジネス論が交わらないじゃない。ビジネスって、人間による活動なんだけどね。そうだ。前に、持ち家とかマイ・ホームとか、つまり〈家所有〉という価値観があるから、住宅産業は成り立ってるんだって話をしたことがあってね。その価値観を壊したら、産業ごと吹っ飛ぶの。その話をした場所が、旭化成の本社だったんだけど」と〈彼〉は苦笑いした。
「だから新しいビジネスや産業をつくるには、新しい価値観をつくらないと」
「そう。それがいま弱いわけでしょう。イノベーションという割にね」

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