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世界史のなかで、人間が大きな創造をした瞬間をあげろといわれたら、17世紀を抜きに語れない。ふしぎと17世紀から18世紀にかけては、地殻が変動し、物事が大きく動いた。新理論が興り、新思想が駆け抜け、社会が明らかに別の形へと移行していった。

社会が大きく変動するほどの時代には、新しい社会思想が誕生する。その出発点となる震源地はわかっている。イギリスだ。この激震が海を越えて、フランスにも鳴り響いた。

ⅰ イギリスにおける近代市民革命の理論的裏づけを準備したT. HobbesとJ. Locke

ⅱ これを受け継いで、経験主義的・合理主義的な人間性論にもとづく道徳哲学を構築したD. Hume、B.de Mandeville、F. Hutcheson、A. Smith、A. Fergusonなど、

ⅲ また、これらイギリス啓蒙思想の流れをフランスに導入して、フランス革命に法・政治思想的な面からの裏づけを準備したC. de S. Montesquieu

ⅳ 人間の理性が、非合理的な要素をひとつずつ取り除いて、合理主義に向けての人間精神の「進歩」を実現していくと考えたM. de Condorset(理性主義的進歩史観)

ⅴ イギリスのA. Smithに先行して、経済における自然的秩序の形成を理論化した F. Quesney および A.R.J. Turgot、

ⅵ Condorsetの理性主義的進歩史観を実証的科学主義へと方向づけたSaint-Simon および A. Comte などが含まれる。

ここにあげた名前のうち、最も古いのはHobbesである。その主著『リヴァイアサン』(1651)を最初の社会科学書と考えれば、近代社会科学の起源は、17世紀中盤あたりにまでさかのぼりうる。しかし、Hobbesの国家契約思想そのものはまだ絶対王政の産物であった。そこで、これをひとまず除外して考えるとすると、近代市民社会の理論として最もはやいのがLockeの『統治二論』(1690)、そして Hume 以下イギリスとフランスの啓蒙主義思想家がいっせいに活動したのは18世紀、Saint-SimonとComteの実証主義の登場は19世紀になってからのことである。つまり、18世紀を中心として、17世紀後半と19世紀初頭をふくむ時期が、社会科学の確立期とみなされる。