魯迅の書き出し

投稿者: shidarapress

以前、北京の魯迅博物館を訪れた。すっかり見入ってしまい閉館に気づかなかったところ、キュレイターの女性が優しく声をかけてくださった。

◉私が阿Qの正伝を書こうと思いたってから、もう1年や2年ではない。しかし書きたい一面、尻込みもする。どうやら私など「言論で後世に不朽の名を残す」柄ではないらしい。というのは、昔から不朽の筆は不朽の人の伝記を書くもの、と相場が決まっている。こうして人は文によって伝わり、文は人によって伝わる——となると一体、誰が誰によって伝わるのか、だんだんわからなくなる。それでも結局、阿Qの伝記を書くわけだから、なにか物の怪にでも憑かれているのかもしれない。さて、この不朽ならぬ速朽の文を書くと決めて、いざ筆をとると、たちまち難関にぶつかった・・・

『阿Q正伝』は、こんな書き出しになっている。『阿Q正伝』であるから結局は「正伝」の語に落ちつくのだが、このあと、列伝か自伝か、内伝か外伝か、あるいは別伝、家伝、小伝かで迷うな、どれもぴったりじゃないんだ、ああ残念という話が続く。

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