言葉を削れない男

投稿者: shidarapress

『失われしもの』は、ひとりの作家の若き日の肖像であり、その本のとほうもない長さが取りざたされた。原稿を見た人に言わせると、床から数フィートの高さになるということだった。実際には、薄いオニオンスキン紙で1114枚で、語数にして33万語、厚さ5インチだった。ウルフ自身も認めていたが、これほど大部の本ではまず読み通せないし、扱いにくいに決まっていた。そこで、トーマス・ウルフはひとつの方針を立てて縮小することにし、日記にこう書き記している。「第一に、すべてのページから、作品の意図に照らして重要だと思えない言葉を削ること。各ページから10語削除しただけでも1万語を減らすことができる」。そして、1月中旬からこの仕事にとりかかっていた。

ウルフは、友人宛の手紙にこう書いている。「作品の採用が決まったとき、せいぜい斧をふるって10万語ほど削るようにと出版社から釘を刺された」。パーキンズからもおおまかに指示されたのは、主人公にぴったりと焦点を合わせ、ひとりだけ際立つように削除の手を加えればいいだろうということだった。ウルフは長い時間をかけて『失われしもの』に手を入れ、その出来栄えに満足して、数週間後にはまたスクリブナー社に出かけた。パーキンズは、作品の詩情をすばらしいと思う気持ちこそ変わらなかったが、納得しなかった。ウルフの努力にもかかわらず、原稿はたった8枚分しか短くなっていなかったパーキンズに示唆された部分をほとんど削除したのはいいが、その前後をつなぐため、新たに書き足した言葉が数千語に膨れあがってしまったのである。287-88

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