物語というSocial force

Pocket

エマニュエル・トッド( Emmanuel Todd, 1951- )が、ここ330年ぐらいのスコープで、BREXITについて、次のような解釈をしている。

「 イングランドからはじまった産業革命は、ヨーロッパ全体を経済的に一変させました。そして、1688年に名誉革命によって、議会主義の君主制が確立されました。欧州各国で採用されている、近代的な民主主義の出発点はイギリスにあったのです。

1789年のフランス革命家の夢と目的は、政治的近代化のモデルであるイギリスに、なんとしても追いつくことでした。そしていま、そのイギリスが、自らが先鞭をつけたグローバリゼーションの流れから抜け出そうとしている(EU離脱 Brexit の意味あい)。イギリスの国民国家への回帰は、歴史的にも最重要のフェイズだと思います 」


note: 名誉革命(Glorious Revolution, 1688-89)
この革命は、政治史上、イギリスの《議会政治の確立》という点で大きな意義をもつ。これにより国王の絶対的な専制(※)を打破し、《議会》というコンセプトが政治システムの中核に据えられることになる。王権との調和の上に、君主制(立憲君主制)の基盤が形成された点で特筆される。

こうした政治システムのイノベーションに到るまでには、次のような経緯がある。
ⅰ)まず、※ 国王の絶対主義的専制について。こうした時代には、国王による専制的な政治支配を正当化する「物語(ナラティブ)」が登場する。それが「王権神授説(divine right of kings)」で、これによれば、王権は神に由来するもので、神聖にして絶対である。王は神にのみ責任をもち、人民は王の命令に反抗することは許されない。

ⅱ)こうしたなか、フランシス・ベーコンFrancis Baconの経験論を継承したトマス・ホッブズ(Thomas Hobbes, 1588-1679 )が登場すると、個人と国家の関係は《契約》によって成立すると主張。王権の正当性を、神ではなく、契約に置くという、別の「物語(ナラティブ)」をぶつけた。主著『リヴァイアサン』1651 の登場である。ただし、ホッブスは王政を否定することまではしなかった。とはいえ、新たな「物語(=新たな正当性の基盤)」を唱道したホッブスは、社会契約論の先駆的理論を提示したことになる。国王サイドは、王権神授説という既成の「物語(ナラティブ)」で対抗するも、1688年の名誉革命(上記)によって立憲君主制が成立すると、国王であっても「法と議会」のもとにしたがう、との原則が打ち立てられることになる(議会主義の君主制)。

ⅲ)すると今度は、王権神授説という宗教的権威を否定し、新たに立憲君主制を正当化する「物語(ナラティブ)」を語る語り部が登場する。それがジョン・ロック(John Locke, 1632-1704)である(『市民政府二論 Two Treatises of Government』1690)。こうしてイギリスは、王権神授説という旧来の「物語(ナラティブ)」から脱却し、イギリスの議会制度が新たに成立していく( 物語の革新 → 新制度の設計 )。
ロックの語った「物語(=政治思想 political theory)」では、各人は立法者に対しても対抗権=革命権を持つと語られていたから、それは名誉革命を弁護するものであった。こうしたロックの「物語(ナラティブ)」は、18世紀のフランス啓蒙思想、アメリカの独立運動(とくに独立宣言, United States Declaration of Independence, 1776)にも大きく取り入れられていくことになる。「物語(ナラティブ)」は、時と場を越境し、新たな歴史を展開する社会的原動力social force になっていく。

コメントを残す

error: Content is protected !!
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。