ぜひとも慶應義塾を永久に残しておかなければならない、
という義務もなければ名誉心もない。
はじめから、揺るぎなくそう思っている。
だから世の中に怖いものがない 234。
福沢は別のところで、こうも語っている。
「塾(慶應義塾のこと)の盛衰に気を揉むようなバカなことはしないと、
腹の底に極端の覚悟を決め、塾を開いた。
そのときから、いつでもこの塾を潰してしまおうと始終考えているから、
少しも怖いことはない」と 307
自分が開いた塾の盛衰に一喜一憂することなど愚かなことであるし、
未来社会の役にたたず、周囲からの支持がなくなれば、
自ずからなくなって当然ではないかと考えていたわけだ。