物語の鋳型

投稿者: shidarapress

1839年8月9日、ドストエフスキーは、兄ミハイル宛の手紙にこう綴っている。

「あなたは、たくさん本を読んだといって自慢していますよね。しかし、ぼくがそれを羨んでいるなどと思わないでください。ぼくもペテルゴーフで、少なくとも兄さんに劣らぬくらい本を読みましたから。ホフマンは全部読みました、ロシア語とドイツ語で、それからバルザックをほとんど全部…。それからゲーテの『ファウスト』と、そのいくつかの短い詩もね、そしてポレヴォイの『歴史』『ウゴリノ』『ウンディーネ』……それから、『クロムウェル』と『エルナニ』を除くヴィクトル・ユゴーも…」

兄に対する純粋なまでの対抗心を自己研鑽のバネにしながら、ドストエフスキーは何かと制約のある環境下で、できるだけページを繰っていった。こうして彼のなかに少しずつ「物語の鋳型」がアーカイブされていく。

設樂剛事務所

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